マレーシアから世界とつながる

マレーシア下院総選挙2018、日本の皆さんに知ってほしいこと

既に報道されている通り、5月9日のマレーシア下院選挙で与野党が逆転、マハティール氏が本日正式に首相に就任しました。

開票翌日のThe Star 紙

今回の選挙については、↓こちらの伊藤充巨さんの記事をぜひ読んでみてください。非常に深い選挙考察で、私も日々ペナンで感じている事が具体的に解説され、納得できる内容ばかりです。

【緊急コラム】政権交代はなぜ起きたのかーーマレーシア民族別政党の終焉

上記の記事でも書かれていますが、今回は『民族ごとの政権対立ではなかった』点が大きなポイントだと思います。私は外国人ですが、この国の大きな歴史の転換点に立ち会えた事、また本気で祖国を変えようと世界中から力を合わせたマレーシア人を目の当たりに出来たこと、とても幸せにありがたく思います。

BEYOND MALAYSIAでは選挙中のペナンの様子と、市井の人々のエピソードを時系列で記録しておきます。特に、世界に散らばるマレーシア人が投票のために奮闘した様子はぜひ日本の皆さんに知って欲しい!私はこれらの記事を目にするたびに涙が止まりませんでした。

選挙期間中のペナンの様子

↓街中には各政党の旗が掲げられています。特に交差点や市場の周辺など、人が集まりよく目につく一等地は各政党入り乱れ。広場などで演説会はありますが、日本の様に始終選挙カーが街中をめぐる事はありません。

↓今回の選挙のキーワード『TSUNAMI』の文字とイラストが広告にも

↓与党BNの若手議員、野党連合PHの広告と地域のPH事務所的な建物

↓環境などに関するマニフェスト的な広告。特に近年問題になっている乱開発による自然破壊の阻止、大雨による洪水対策、動物保護などを訴えるものも目立ちました。

↓おそらく乱開発に反対する広告?ポーズが『Wakanda Foreverだ!!』(注:映画『Black Panther』のキメポーズ) と若者たちにウケていました(絶対ねらったよね?笑)

世界中のマレーシア人が投票のために奮闘!

国外に住むマレーシア人は在外選挙投票ができますが、マレーシアから郵送で投票用紙が送られる→到着を待ち記入→マレーシアの該当投票所へ返送、という流れだそうで。なんとその投票用紙が手元に届かず、投票に間に合わないケースもあるとか…(意図的に遅く発送しているという噂あり)

で、その事態に対して某お偉い方はこんな事を言ってましてね…

海外に住むマレーシア人投票者は人口の0.1%にも満たないのだから、選挙結果にはなんら影響しない

ムキーーーッ!! (by Mango)

でも、世界中のマレーシア人は諦めません。

テキサス:4人の投票用紙をパイロットがマレーシアへ運ぶ

テキサス在住のマレーシア人Kristinaは投票前日の8(火)に投票用紙が届き、返送は間に合わない状態。同じ状態のマレーシアン3人とFacebookで繋がり『Houstonの空港からKL行きのフライトに搭乗する誰かへ投票用紙を託せないか』と計画。チェックインカウンターでサインボードを掲げていた所、投票の為に帰国する1人のマレーシア人パイロットが快諾してくれた。パイロットはKLまで、その先は別の人へ託されて4人それぞれの該当地区投票所へ運ばれることに。

メルボルン:200人の投票用紙をボランティアに託しマレーシアへ

投票日前日に届いた用紙の記入時はお互いの証人となった


Twitter

投票用紙が前日または当日に届き、困ったマレーシア人がソーシャルメディアに呼びかけ200名以上がオーストラリア・メルボルンのビクトリア図書館に集結。投票の為に帰国するマレーシア人がボランティアとして投票用紙を預かり運ぶ。フライト費用を皆で少しずつカンパした。

アムステルダム:空港に集まり、マレーシアへ戻る仲間へ投票用紙を託す

Twitter

東京:DHLの集荷締め切りまで残り1時間!雨の中を走る

Twitter

投票用紙が前日5:00PMに届き、同日6:00PMのDHL締め切りに間に合わせるために40分電車に乗り→雨の中を走り→5:57PMに到着、RM200(約¥5500)を支払ってマレーシアへ送付した青年。

オークランド:”Runner“ に票を託す!

ロンドン:在外選挙投票の妨害を訴えるデモ

『クリーンでフェアな選挙を望む』『汚職の世界チャンピオン(Najib)』

『(影響力のない)0.1%はここにいますよー』『私の投票用紙はどこ?』『マレーシア選挙員会は在外選挙投票を妨害している』

Twitter

どうですか、このマレーシアへの熱い思いと行動力!泣けるー!
世界中に散らばるマレーシア人、本当にカッコいい。SNSも大きく貢献していますね。
エピソードは、世界中にもっとたくさんあるので、Twitter で@GlobalBersih をチェックしてください。Overseas Malaysianの熱いストーリーが詰まっています。

投票日の5月9日(水)

在ペナン日本領事館から『暴動の恐れもあるため外出は控える様に』と通告あり。でも実はこの日はIGCSE(UK式最終テスト)と重なっており、我が家の娘(16)も該当。渋滞や混乱を考慮して試験開始3時間前に自宅を出発しました。

↓投票日当日の様子。暑い中、小学校前で投票の列に整然と並ぶ住民の皆さん。ラジオでは「IDをお忘れなく!」と呼びかけていました。

↓投票所となった各学校前は投票者の駐車列で渋滞、狭い道では車が入り乱れて大変だった様子。

混雑する投票所のPenang Free School 前

↓新聞 The Star から

左上:締め切り間近の投票所へ走る女性 左下:投票済みのインク 右上:吊り橋を渡って投票所へ(サバ州)
右中:締め切りの5pmを過ぎても並び続ける投票者の列 右下:車椅子の投票者を助ける住民たち

投票日翌日

深夜に集計が終わり野党連合の勝利が確定、10日(木) 11日(金)が祝日に。公立校やお役所などは一斉にお休み、私立校はそれぞれの判断で通常通りとした学校もあり。息子の通うインター校は選挙前から登校と決まっており、がら空きの道路を送迎。混乱もなく静かな朝、市場なども通常通り。

マレーシアでは子供たちも政治の話を普通にするので、中華系ローカル校に通う娘(高2)のクラスチャットは夜通し政治の話で持ちきり、大変な事になっていたと。途中から通知をオフにして寝て朝起きたら400件以上のチャット履歴が残っていたそう。実は前回選挙時の小学生でも、通っていたインター校で「どの政党を支持するか?」といった話をしていて驚きました。親世代がきちんと政治に関心を持っていれば、子供にも伝わるんですね。→過去記事参照

不正は行われたのか?

前回2013年の選挙では、様々な不正が噂されましたが、今回もあちこちで色々あったようです↓。(2013年時の不正疑惑については過去記事をどうぞ)

・開票所の周囲一帯が停電?(Black out magic!)
・投票に行ったら既に誰かが投票済みだった
・選挙権が無いはずの外国人が投票所で多数見つかり追出す(偽IDで投票?)
・選挙登録していないのに、既に投票用紙がどこかへ送付済みだった
・大量の投票用紙が入った箱がどこからか運ばれてきた
・在外選挙の投票用紙が届かない

注:選挙権の年齢21歳になった後『選挙登録の手続き』後に投票権が得られるそう。その手続きにも3ヶ月ほど掛かるらしく、今回の選挙に間に合わなかった人も居るそうです。

その他、ネットの写真や広告から

Facebookで回ってきた選挙に関連する写真や広告です。

↓開票作業のボランティアスタッフ、あらかじめヘッドライトを装備!

停電になってもOK!(笑)

↓投票済のインク(消えづらい)をもじってこんなパロディも(笑)

↓『投票済みの指インクを見せたら○%引き』『Buy 1 Free 1』など飲食業の広告。人も企業も一丸となって投票率UPに貢献しています。これは宣伝にもなって一石二鳥!日本の企業も次回選挙でぜひ導入してはいかがでしょう?!

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以上、選挙の様子とネットからの情報をまとめてみました。
ちょっと長くなってしまって、読みづらかったらごめんなさい。でもどうしてもこの熱気をお伝えしたくて。

実は今回の新政権、まだ分からない事がたくさん。
GST廃止やその他のマニフェストはどう実行されるのか、ローカル友人たちが手放しで100%喜んで良いものなのか、そして外国人の私たちにはどんな影響が及ぶのか…そのあたりはじっくり見極めていこうと思います。また、ついお祭りムードに乗って色々言ってしまいがちですが、『外国人は他国の政治に一線を超えた口出しや意見をする事は慎もう』と感じた出来事もありました。

自国に対するマレーシア人の姿勢は本当に熱いものがあって、彼らは日本人が忘れてしまった『人間として根本的に大切なこと』を持っている気がしてなりません。学ぶことがあまりにも多すぎる、今回の選挙でした。

正直、私は日本は変わらないと見限っていたのですが、改めます。私も祖国日本を諦めず、自分に出来る事を少しでも続けていこうと決めました。マレーシア、ありがとう。大好きです!今回の政権交代で、大切な友人や同僚たちがHappyになることを強く願っています。

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おまけ

↓ネットで拾ったマレーシア政界の相関図、これを熟知すればマレーシア通になれるかも?!